日本に住んでいる・住む予定の外国人は言語や文化の違いなどに、日々戸惑うことも多いでしょう。特に子育て世代は、子どもの教育制度や学校生活についても十分知っておく必要があります。そこでこちらの記事では、日本の小学校の特徴についてわかりやすくご紹介。
子どもが安心してスクールライフをスタートできるよう、しっかりとチェックしておいてください。
目次
日本の教育制度の特徴
まずは日本の学校・教育における7つの特徴を詳しく説明します。
教育年数が「6・3・3・4」
日本では、「6・3・3・4制」の教育制度が採用されています。これは、小学校・中学校・高校・大学で学ぶ年数をそれぞれ表しており、小学校は6年制、中学校と高校は3年制、大学は4年制であることを示しています。
この中で義務教育の期間は小学校と中学校をあわせた9年間で、就学義務が生じるのは6歳です。
ただし、最近では「6・3・3制」として、中高一貫校も増加しつつあります。
通学や下校に保護者は同行しない
海外では、保護者が子どもの送り迎えをするケースがほとんど。
ですが、日本では親が送り迎えをするケースはあまり多くありません。日本の子どもたちは自分で通学・下校するのが一般的。遠方の学校に通う場合は、小学生1人でも電車やバスなどの公共交通機関を利用することが多くあります。
食事マナーや食育が自然と身に付く給食制度
日本の義務教育課程では、栄養バランスが考慮された給食が、基本的に導入されています。
海外でも取り入れている国はありますが、日本では食事のマナーも一緒に教育するのが特徴。子どもたちが当番制で配膳を担当するほか、クラス全員が決められた席に座って食事を楽しみます。
子どもたちの食育に大きな影響を与える給食は、日本の教育制度の良さとして海外からも高く評価されています。
清掃は児童が行うため清掃員がいない
掃除の時間も、給食同様に日本が評価されている教育制度のひとつ。
学校ごとに清掃員が配置されている海外の学校とは異なり、日本では子どもたちが掃除を担当します。掃除の時間を通して、子どもたちは周囲を清潔に保つことの大切さや掃除の大変さを学んでいます。
日本人が公共の場をきれいに使用するのは「自分が汚したところは自分できれいにする」という意識が、子どものころから自然と身に付いているからです。
留年制度がない平等主義の義務教育
日本の教育は、クラス全員が同じレベルになるように指導するのが特徴。また、どんなに成績が悪かったとしても、義務教育では留年することはありません。
経済状況や勉強の向き・不向きにかかわらず義務教育を修了できるため、保護者にとっては安心できる制度と言えるでしょう。
身だしなみや持ち物に関する校則が厳しい
日本には、学校ごとに決められた細かい校則があります。
たとえば身だしなみに関する校則では、化粧やマニキュア、アクセサリーの着用などがNGといったものも。海外ではできて当然のことが、日本ではできないこともあるため、注意が必要です。
またスマートフォンやお菓子・ジュースの持ち込みを禁止している学校も多数。厳しいようですが、規律を守るために必要なルールです。「知らなかった」では済まないこともあるため、校則はきちんと確認しておくことをおすすめします。
部活動やPTAがある
日本は小学校でのクラブ活動や中高で行う部活動が活発。クラブ活動や部活動は、同級生だけでなく先輩後輩とも親睦を深めることができ、交友関係を広げる大きなチャンスです。
またPTAがあるのも日本の特徴。PTAとは、子どもたちのために親などが協力して活動を行う集まりのことです。活動内容によっては多くの時間を割かなければならない場合もありますが、日本人の保護者と深くかかわりたい方は、積極的に参加すると良いでしょう。
世界の学校には面白い教育制度がたくさん!
日本と同じように、世界にも面白い教育制度がたくさんあります。ここでは、日本と外国の違いを比較しながら、それぞれの国における教育制度や学校生活の特徴をご紹介しましょう。
アメリカ合衆国の教育
アメリカ合衆国では、州によって就学義務に関する規定が異なります。12年の初等・中等教育の中で、教育年数は「8・4年制」や「6・6年制」「5・3・4年制」などさまざま。就学義務開始年齢も6~8歳までと広く、アメリカ合衆国らしい自由な風潮が特徴です。
またカリキュラムや教科書のほかに休日の設定までもが、各学校区の裁量によって決められます。そのため、学校区により教育レベルに大きな差が生まれやすいのが、平等を重んじる日本の学校とアメリカの学校の違いと言えます。
イギリスの教育
イギリスでは、5~16歳までの11年間を義務教育期間と定めています。留年制度のない日本とは異なり、イギリスでは12~16歳が通う「セカンダリー・スクール」の修了時に中学卒業検定に合格できなければ、次の教育機関に進むことはできません。
セカンダリー・スクール卒業後は、将来的に大学進学を希望するのか、就職を希望するのかによって進む道は分かれます。いずれにしても、イギリスでは、将来なりたい職業に就くために必要な知識や技術を学ぶための環境が整っています。
フランスの教育
フランスの義務教育は、3~16歳の13年間。飛び級制度が定着していることから、年齢ではなく学力によって進級が決まります。留年制度も導入しているなど、平等を重んじる日本とは真逆の教育方針がフランスの特徴です。学歴社会のため、子どもが小さいうちから、将来名門大学に入学させたいと考える保護者は少なくありません。
共働きの親が多く、負担をかけないために入学式や卒業式といった学校行事もほとんどないようです。
中国の教育
中国は、日本同様に9年制の義務教育を導入しており、教育年数も「6・3・3・4制」が基本。教育の成果が高いことで世界から評価されていますが、地域の経済格差が大きく、都市部と農村部では教育年数が異なることも。中国の受験戦争が激化している背景には、生活水準が貧しさと子どもへの大きな期待があるとも考えられています。
現在中国では受験偏重の教育制度の見直しが進められており、その一環として教育の質向上が重視されています。
日本の教育と海外の教育の違いは?
平等な知識レベルを目指す日本とは異なり、ヨーロッパ諸国をはじめ多くの国が、子どもたちの能力にあわせた教育を行っています。学校の宿題も決まった回答が存在するわけではなく、自分で調べたり考えたりすることで、学習意欲そのものを育むような内容になっているのが特徴です。
今回は日本と欧米、中国で教育の違いを比較しましたが、どの国が良い悪いというわけではなく、それぞれの教育制度に優れた点があります。合う・合わないはあるかもしれませんが、子どもが前向きに学校生活を送れるようサポートするのが、保護者としての重要な役割と言えるでしょう。
日本の教育を受けるメリット・デメリット
日本の教育を受けるうえでは、メリットやデメリットも気になるところでしょう。ここでは、日本の教育制度が抱えている現状の問題点とともに、世界から評価されているポイントについても説明します。
児童の才能や個性を伸ばしにくい
日本は基本的に、受け身でひたすら先生の話を聞く講義スタイルの授業が主流です。加えて、教科書に沿って授業は進むため、一人ひとりの能力や知識レベルにあわせて教えることができず、才能や個性を伸ばしにくいのが問題点とされています。
成績が悪くても留年することがないのはメリットかもしれませんが、画一化した授業の中では、本当に学びたいことが学べないというデメリットがあります。
入試で合格するための学習傾向
日本では、自分が将来どんな仕事をしたいかではなく、知名度やブランド力が高い大学に合格するための学習が根付いています。これは日本の社会全体が、偏差値で学校を評価しているためです。
実際に、学校側にも試験で良い結果を得るための教育が求められています。成績が個人の評価基準となる日本の学習スタイルでは、子どもの能力や個性が開花することなくしぼんでしまう可能性も多分にあるでしょう。
暗記中心の学習スタイル
日本の学習スタイルは、基本的に暗記中心。社会・理科・英語などは特に暗記科目として認識されており、教科書や参考テキストを覚えることで試験をクリアできます。こういった暗記学習は自分の考えや疑問に思ったことを話し合う機会を減らし、問題提示能力が欠如しやすいと世界からは問題視されています。
暗記学習の悪い点は、ただ覚えるだけでその根拠や理由まで深掘りされないこと。結果として記憶にはほとんど定着せず、社会に出てからもその知識が使われることはほとんどありません。
義務教育終了後の進学率の高さ
一方で、日本の平等を重視した教育には良い面もあります。それは、誰もが望めば義務教育終了後も高校、大学へと進学するチャンスがあるということです。実際に日本では、高校への進学率が98%以上にものぼります。親の学歴や国籍などの外的要因が子どもの学力・進路にも影響することがある海外の教育制度と比較し、教育格差がほとんどないのが日本教育の良いところです。
特に進学しやすいとされる日本では、どの偏差値レベルであれ大学を卒業してしまえば「大卒」の称号は比較的簡単に手に入ります。世界から見た日本の教育は改善すべき点も多数ある中で、平等であることは悪い面ばかりではないと言えるでしょう。
教科以外にも学べる内容が多い
音楽や保健体育、美術、技術家庭科といった幅広い実技科目が学べるのも日本で教育を受けるメリットです。実際に授業内容も充実しており、家庭科の授業では調理実習、体育ではマット運動やプール、音楽では打楽器や弦楽器の演奏など、さまざまなことにチャレンジできます。
新たな才能を発見することで、将来の選択肢が増えるのは保護者にとっても大きな魅力です。
義務教育でも施設や教材が充実している
日本の学校は、私立でなくても施設や教材が充実しています。技術室や音楽室、家庭科室といった教室がきちんと併設されているほか、それぞれの教室には一人一台使用できるパソコンや珍しい楽器、ガス調理器などが設置。欧米では、こういった設備が充実した学校に通えるのは富裕層と決まっていますが、日本では私立・公立ともに標準的な設備が整っています。
勉強以外の面で子どもを育てる・可能性を伸ばすことを大切にしているからこそ、日本では実技科目にも重きを置いているのです。