自発的に行動するというスキルは、大人になっても評価される大切なスキルです。しかし、自発的な行動を起こすスキルを身につけるのは決して簡単ではない上、ある程度大人になってから身につけるのはより困難となってしまいます。
そのため、親は子どもが小さな頃から自発的に行動するスキルを身につけさせることが重要です。当記事では、子どもが自発的に行動することが求められる理由やメリットから、スキルを身につけさせるためのコツまで徹底的に解説します。子どもにはよい人生を歩んでもらいたいと願うママ・パパは、ぜひ参考にしてください。
1.子どもが自発的に行動することが求められる理由
自発性を伸ばすことは、古くから重要とされています。そもそも「自発的に行動する」というのは「周りや他人の教えに左右されたり影響されたりすることなく、自ら思い立って物事を進めるさま」を指します。自発性が低いことの問題は、選択を迫られる多くのシーンで、責任をもつことができなくなるという点です。
自発性が低ければ自分の選択に自信がなく、失敗や恥を恐れるようになってしまいます。従って自らの選択に責任をもてなくなり、行動範囲を狭めてしまうと言えるでしょう。
今後の社会は、AI技術の発展により多くの仕事をAIがこなすようになると言われています。これにより、「指示待ち人間」の業務は徐々に失われ、会社組織から自発性・自主性の低い人材を筆頭に削減されるという状況が考えられるでしょう。そのため、日本のみならず世界中において自発的に行動できる子どもを育む教育改革が行われています。
このような問題を受けて、日本では2020年から始まった新たな学習指導要領において、今後社会がどのように変化しても自ら判断して行動できる能力を育むカリキュラムが組み込まれました。子育てにおいても、「子どもたちの自発性を育てる」という教育方針が推進されていることが分かります。
1-1.子どもが自発的に行動するメリット
子どもの頃から自発性を育むか、ある程度大人になってから自発的な行動を心がけるかでは、後者のほうが圧倒的に困難です。子どもの段階で自発的に行動できるスキルを身につけておけば、大人になっても下記のようなメリットを得られます。
●メリット1:明確な目標をもてる
自発性を高めると、学業や仕事において明確な目標をもつことが可能です。また、目標達成に向けて自分に今足りないものは何かを考えたうえで、必要なステップなどの計画を立てて実現できるため、達成感も得やすいと言えるでしょう。
●メリット2:個性が武器になる
自発性が高い人は、自らの欲求や立てた目標に対して素直に行動でき、その課程において個性が強く見られることが特徴です。このような個性はよくも悪くも注目され、自らの大きな武器となるでしょう。たとえ周りから好奇の眼差しを向けられても、「それだけ多くの人に覚えてもらえる」と言い換えられます。
●メリット3:自己肯定感が高まる
自発性の高い人は、前述の通り自身で決めた目標の達成に向けて前向きに、かつ着実に取り組む傾向にあります。自身で取り組んだことを一度でも達成できれば、自己肯定感が大いに高まる点も魅力です。自己肯定感が高まれば、次の目標にも前向きにチャレンジできるようになるでしょう。
2.子どもが自発的に行動するためには「内発的動機づけ」が重要!
子どもが自発的に行動するために重要な要素は、「内発的動機づけ」です。内発的動機づけとは、物事の結果ではなくその行為や課程に重きを置いて行動する状態を指します。例えば、「計算問題を解けたときの達成感が好きだから、算数ドリルを毎日行っている」などのケースが内発的動機づけにあたります。
やる気を引き出すほかの要素には、「外発的動機づけ」も挙げられます。しかし、外発的動機づけは「先生や親に怒られるから、宿題をしなければならない」など、物事の結果や賞罰に重きを置いて行動する状態であり、自発性を高めるためには適切ではありません。
誰に言われるまでもなく、自らやる気を引き出し行動するためには、内発的動機づけを高めることが最も重要です。
2-1.子どもの内発的動機づけを高める方法とは?
子どもの内発的動機づけを高めるためには、下記2つの方法が有効です。
●成功体験を与える
成功体験は、自発性や積極性を引き出すために最も効果的な要素です。どれだけ自発的に行動できたとしても、失敗が続くと誰でも意欲が消失してしまうでしょう。そのため、子どもが少しの努力で達成できるような目標、いわゆるスモールステップを設定させてみることがおすすめです。
●好きなことを学ばせる
好きなことを学んだり実践したりしているときに感じる知的好奇心や楽しさは、内発的動機づけの最大の源です。「もっと楽しみたい」「より深く知りたい」「自分なりのアイデアを実践してみたい」という気持ちは、すべての行動の意欲につながります。子どもの好きなことを多く引き出すためにも、親はあらゆる体験をさせてみるとよいでしょう。
3.子どもが自発的に行動するコツ5つ!
子どもが自発的に行動する人間になるためには、親が自発性を育むためのコツを知っておくことが重要です。子どもの自発性を高める主なコツには、下記5つが挙げられます。
- ●しっかりとほめる
- ●できないときは暖かく見守る
- ●依頼・提案ベースで声かけをする
- ●子どもがやることをリスト化する
- ●子どもが1人でやり遂げられる環境を整える
ここからは、それぞれのコツについて詳しく説明します。
3-1.しっかりとほめる
子どもの自発性を高めるためには、「しっかりほめる」ことが最も重要です。一見、非常に簡単なものに思えますが、適切なシーンでほめることのできていない親は意外と多くいます。
例えば、飲食店などで子どもがついうるさくしてしまった場合、「静かにしなさい」と叱るケースは多々あるでしょう。しかし反対に、子どもが静かにご飯を食べた場合はほめているという親は少ないのではないでしょうか。子どもがよい行動を起こしたときは、自分にとって当たり前という基準を押し付けず、「静かにご飯を食べてえらいね」としっかりほめてあげることが大切です。
子どもは、たとえどれだけ小さな行動であってもほめられると嬉しくなり、より積極的によい行いをするようになるでしょう。
3-2.できないときは暖かく見守る
子どもがよい行いをしたときはきちんとほめることが大切ですが、よくない行いとしたときは叱ってメリハリをつけることも大切です。しかし、内発的動機づけを高めるためには、できないときにすべてを叱るのではなく、時には暖かく見守ることも重要となります。
子どもは口うるさく注意されても、どうしても前向きになれません。怒られてから行動に移すのはあくまでも外発的動機づけであり、前向きな気持ちで自ら進んで行うことにはつながりません。なるべく暖かく見守ることをベースに、子どもの意欲向上やモチベーション維持をサポートしてあげるとよいでしょう。
3-3.依頼・提案ベースで声かけをする
「○○をしなさい」などといった指示・命令口調での声かけは、内発的動機づけの向上を妨げてしまうやり方です。内発的動機づけを高めるためには、子どもと対等な立場に立って、依頼・提案ベースで声かけをしましょう。
例えば、「早くおもちゃを片付けなさい」といった声かけは「ひとつお願いがあるんだけど、今からそのおもちゃをおもちゃ入れに戻してくれないかな?」などに変換してみましょう。思いやりをもって優しく声をかけることで、子どもは素直に応じたり「お願いを聞いてあげよう」と思いやりを返してくれたりする可能性が高まります。
3-4.子どもがやることをリスト化する
自発性や内発的動機づけがまだ身についていない子どもにとって、やるべきことをこなしたり、時間管理をしたりすることは困難です。つい気が逸れてやらなくてもよいことを始めてしまうという事態を防ぐためにも、親は子どものやることをリスト化し、実践をサポートしてあげることをおすすめします。
作成したリストは、リビングや子ども部屋など、子どもの目につきやすい場所に貼るとよいでしょう。また、リストに書かれたものを実践したかどうかを明確にするためにも、終わったものにはチェックを入れていくこともポイントです。
3-5.子どもが1人でやり遂げられる環境を整える
内発的動機づけを高めるためには、子どもが自身で成功体験や達成感を得ることが重要です。そのためには、親はなるべく手を貸さず、遠くから見守る程度に留めておかなければなりません。しかし、子どもが1人でやり遂げられる環境が整っていなければ、行動力を育むことはできないでしょう。
大人の助けを待たなくても1人で行動し完結させるためには、適切な環境を整えてあげる必要があります。例えば、登園・登校準備といった朝の支度を子ども1人でさせるときは、すべての持ち物を手の届く場所に置いておくなどです。
「親のサポートがなくても1人でやり遂げた」という事実は、子どもの自発性や自立心の向上に大いに役立つでしょう。
まとめ
2020年から始まった新たな学習指導要領で、「子どもが自ら判断して行動できるスキル」を育むカリキュラムが導入されたように、近年では自発性が重要とされています。子どもの段階から自発的に行動できれば、大人になっても明確な目標をもって行動できるだけでなく、個性が武器になったり自己肯定感が高まったりします。
自発性を高めるためには、内発的動機付けが重要な要素となります。子どもに自発性をもたせたいのであれば、内発的動機づけを高めることを重視して、できないときは暖かく見守りつつ、よい行いをしたときはしっかりほめるなど、あらゆるコツを実践するとよいでしょう。ここまでの内容を参考に、ぜひ子どもの「自発的に行動するスキル」の向上をサポートしてみてはいかがでしょうか。