子どもは2歳頃になると運動能力や言語能力、生活力などが急激に発達する傾向があります。「魔の2歳児」「イヤイヤ期」と言われるように、自我が発達してさまざまな場面で自己主張をするようにもなります。
子育てをする上で、子どもの発達具合を知っておくことは非常に大切です。何かしらの問題があっても、早い段階で分かれば適切なタイミングで治療や療育を始められるでしょう。
当記事では、2歳児の発達チェックポイントと、子どもの発達が遅れている場合に考えられることを解説します。子どもの成長状態を知る材料として、ぜひ参考にしてください。
1. 子どもの発達具合には個人差がある
周囲の子と同じことができる・できないを気にする保護者は珍しくありません。自身が幼少時代より比較されてきた経験が、知らず知らずに影響していることが主な理由です。しかし、子どもの発達具合には個人差があります。ある子どもは発達が早く、反対にある子どもは発達が遅いということは、いたって自然な現象です。
また、子どもそれぞれで知能領域のバランスは異なります。得意ですぐにできることもあれば、苦手でうまくできないこともあるでしょう。これは「個人内差」と呼ばれる、発達段階における特徴の1つです。
親として、周囲の子と我が子を完全に比べずに育てることは困難です。しかし、個人差が当然であることが分かれば、じっくりと成長を見守れるでしょう。「うちの子だけ発達が遅れているかもしれない」という過度な不安を持つ必要はありません。
2. 【項目別】2歳の子どもの発達チェックポイント5つ
子どもにはそれぞれの特徴があり、実際に発達チェックをするときは「どのようなことに興味を示すのか」を理解することが重要です。個性を大事にしながら、好きなことや得意なことを見つけてどんどん伸ばしてあげましょう。
ここでは、2歳の子どもの発達チェックポイントを紹介します。
2-1. 【運動】よりダイナミックな動きができる
- ・小走りができる
- ・両足でジャンプできる
- ・両手または片手でボールを投げられる
- ・階段をつかまらずに昇り降りできる
- ・鉄棒に数秒間ぶら下がっていられる
- ・マット上などで横転ができる
2歳頃になると筋肉や骨格が発達してきて、ダイナミックな全身運動ができるようになります。よちよち歩きがしっかりとした歩行に変わり、小走りなどが可能となる時期です。ボール投げは30cm程度が目安となるでしょう。成長の早い子どもは、上手投げをすることがあります。
また、手すりや大人の手につかまっていた階段を、一段ずつ昇り降りできるようになります。1歳頃より活発になるため、大きな事故や怪我をしないよう注意が必要です。
2-2. 【言語】話せる言葉が増える
- ・自分の名前や年齢を言える
- ・日常的なあいさつができる
- ・二語文が使える
- ・簡単な言葉の使い分けができる
- ・名前を呼ばれて返事ができる
- ・相手の目を見て会話ができる
「言葉の爆発期」と言われるほど、2歳は話せる言葉が増える時期です。月齢や性別、生活環境によって成長ペースは異なるものの、いろいろな言葉を話せるようになり、コミュニケーションのレベルが向上します。
「おはよう」「こんにちは」「ありがとう」などに加えて、「パン取って」「おもちゃちょうだい」などの二語文も使うようになります。「たくさん」と「少し」など、言葉の意味を理解した上で使い分けるようにもなるでしょう。
2-3. 【生活力】手先が器用になる
- ・スプーンやフォークが使える
- ・自分で着替えられる
- ・靴や靴下を自分で脱げる
- ・手や顔を自分で洗える
- ・ゴミをゴミ箱に捨てられる
2歳は手先が器用になり、生活力が大きく向上する時期です。手づかみで食べていた1歳とは異なり、スプーンなどを使って食事ができるようになります。簡単な服を自分で着ることが可能となり、片付けも少しずつ覚えてくるでしょう。
他にも早寝・早起きなど規則正しい生活リズムが身につくとともに、大人に促された上でトイレで排泄ができるようになります。生活全般において自分でできることが増えてくるため、過剰に手出しをせず「子どもに任せる意識」を持つことが必要です。
2-4. 【心】自我が発達する
- ・自己主張をする
- ・あらゆることを自分でやりたがる
- ・手伝ってもらうことを嫌がる
- ・こだわりがある
- ・友達と一緒に遊べる
自我が発達し、今までできなかったことに挑戦しようとする時期です。やりたい・やりたくないが明確になる上、自分の意思に反することは泣いたり暴れたりして拒否します。自分以外の人間に興味を持ち始めることも、2歳の心の特徴です。ケンカをする場面もあるものの、友達と一緒に遊ぶことを通じて必要な社会性を身につけていきます。
自我の発達に伴って、しつけの面で苦労することが増えるでしょう。しかし、自分で決めたことがうまくできれば大きな自信へとつながります。精神的な自立を目指す上で重要な時期であるため、優しい気持ちで受け入れることが重要です。
2-5. 【身体】乳歯が生えそろう
- ・幼児食が食べられる
- ・乳歯がおおよそ生えそろっている
- ・身長や体重が一定値に達している(または近い)
おっぱいや離乳食が終わり、ある程度の固い食材や大きな食材を食べられるようになる時期です。食事がますます楽しくなる一方で、虫歯にならないよう注意が必要です。
身長と体重は、下記の表でチェックしましょう。
【身長】2歳の発育値 男子 2歳0~6か月:81.1~92.5cm
2歳6~12か月:85.2~97.4cm
女子 2歳0~6か月未満:79.8~91.2cm
2歳6~12か月:84.1~96.3cm
【体重】2歳の発育値 男子 2歳0~6か月:10.06~14.55kg
2歳6~12か月:10.94~16.01kg
女子 2歳0~6か月未満:9.30~13.73kg
2歳6~12か月:10.18~15.23kg
出典:厚生労働省「平成22年乳幼児身体発育調査報告書(概要)
食事量が増えるため、体つきがしっかりとして見た目も大きくなり、1歳の同時期と比べて身長が約10~12cm伸びる傾向があります。なお、上記は過去のデータに基づくため、あくまで参考としてください。
3. 子どもの発達が遅れているときに考えられること
チェックポイントを確認した上で、自身の子どもの発達に不安や心配な気持ちを抱く場合は、子どもが何かしらの症状を持っている可能性があります。発達に個人差がある以上、すぐに判別できるケースばかりではないものの、最低限の知識を持っておくことは無駄になりません。
ここでは、子どもの発達が心配になったときに考えられることを解説します。
3-1. 発達障がいの可能性がある
子どもは2歳を過ぎると、行動的な特徴がはっきりとしてきます。下記は発達障がいの子どもに見られる主な特徴です。
- ・一人遊びが多い
- ・人見知りをしない
- ・不注意が目立つ
- ・衝動的に行動する
- ・約束ごとをすぐに忘れる
- ・言葉の発達や歩き出しが遅い
発達障がいは、先天的な脳機能障害が原因であることが分かっています。上記に該当する場合は、自閉スペクトラム症(自閉症)やアスペルガー症候群を含めた「広汎性発達障害」の可能性があります。
発達障がいの治療は早期発見が効果的とされるものの、2歳は心と身体が発達段階にある状態です。症状の現れ方はさまざまであり、専門家でもすぐに判別できないケースが多くあります。あくまで可能性があるだけであり、必ずしも発達障がいとは限らないため、焦る気持ちを抑えて経過を見守ることが重要です。
3-2. 自閉スペクトラム症の可能性がある
自閉スペクトラム症は発達障がいの代表的な症状であり、「対人関係を築くことが苦手」「特定の事物に対するこだわりが強い」などが特徴です。子どもの約20~50人に1人はいるとされ、性別は男子が多い傾向にあります。
自閉スペクトラム症の主な特徴は、下記の通りです。
- ・名前を呼んでも反応しない
- ・視線が合わない
- ・表情が乏しい(または不自然)
- ・親を後追いしない
- ・触られることや抱っこを嫌がる
- ・好き嫌いが激しい(偏食)
自閉スペクトラム症は病気ではなく、持って生まれた「特性」と捉えることが適切です。特性に合わせた療育(治療教育)を実施すれば、子どもの将来的な負担を軽減できます。明らかに違和感がある場合は、医師や心理士などの診断を受けましょう。