幼児教育を行ううえで重要なことは、記憶力を高めることです。幼児期は、人生で最も記憶力を伸ばせる時期と言われています。幼児期に記憶力を高めることで、ピアノの譜面を暗記したり、そろばんで加減計算をしたりするなど、素晴らしい能力を発揮できる子どもに育ちやすくなります。
子どもの記憶力を高めるためには、人間の記憶能力について知り、適切なトレーニングで記憶力を養わなければなりません。今回は、幼児期に記憶力を養うことが重要な理由から、記憶の種類、記憶力を高める方法とコツまでを解説します。
目次
1.幼児期に記憶力を養うことが重要な理由
「子どもの記憶力はなぜ高いのか」と不思議に思う人もいるのではないでしょうか。子どもの記憶力が高い理由は、幼児期に脳が発達するためです。
脳に関することは専門の研究者であっても十分な解明ができていませんが、脳の成長は5歳までに8割程度完了すると言われています。つまり、幼児期こそが記憶力を養うために重要な時期です。
また、幼児期は脳からドーパミンが特に出やすい時期です。ドーパミンとは、脳内の情報伝達において重要な役割を持つ神経伝達物質であり、思考や集中力にも関係すると言われています。
1-1.記憶力の種類|育むべき記憶力とは
人間の脳は右脳と左脳で機能が分かれており、右脳と左脳が持つ能力にはそれぞれ下記のような違いがあります。
右脳 | 直感的な能力に優れ、高速かつ大容量の記憶ができる |
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左脳 | 言語力や計算力に優れ、物事を考えたり理解したりできる |
右脳と左脳では、それぞれ記憶能力にも違いがあります。右脳の記憶能力は「長期記憶」であり、左脳が司る記憶能力は「短期記憶」です。
長期記憶と短期記憶の違いは、下記の通りです。
〇長期記憶とは
長期記憶とは、長い期間が経っても忘れずに記憶できる能力のことです。たとえば、家族の顔や名前は一度記憶すると忘れることがありません。また、自転車の乗り方や箸の持ち方といった体で覚える記憶も、長期記憶の一種です。
〇短期記憶とは
短期記憶とは、短い期間だけ記憶できる能力のことです。短期記憶は一時的な情報を数十秒~数十分しか記憶ができません。初めて会った人の顔が半日後には思い出せない、電話した後に電話番号を正確に思い出せないなど、すぐに忘れてしまう記憶が短期記憶に該当します。
幼児期に育むべき記憶力は、長期記憶のほうです。幼少期に長期記憶を鍛えることで、物覚えが良い子どもに育ちやすくなります。また、習い事には欠かせない、体で覚える記憶能力を向上できる点も長期記憶のメリットです。
2.【幼児向け】記憶力を高める方法
幼児期の記憶力を高めるといっても、特別な勉強や訓練を行う必要はありません。幼児期はもともと記憶力が成長する時期であるため、簡単な会話や遊びを通して記憶力を高めることが可能です。
以下では、家庭でできる幼児向けの記憶力を高める方法を3つ紹介します。
2-1.会話する機会を増やす
子どもは、身近にいる大人との会話を通して言葉を覚えます。会話することで言葉を覚えられる理由は、言葉を聞く・話すことによって五感が刺激を受けるためです。たとえば、親が「りんご」と言うと、子どもは「りんご」と真似て話します。また、実物のりんごも用意すれば、視覚によってりんごの色や形も認識できるでしょう。
会話する機会を増やすことで、子どもの記憶力を高めることができます。覚えてほしいことや、子どもが興味を持ったことについて、積極的に会話を交わしましょう。子どもが「ママ、○○ってなに」と聞いてきた時は、「○○のことだよ」と短い言葉で簡潔に教えると、子どもは素早く記憶できます。
会話で記憶力を高めるためには、親子で一緒に散歩しながら会話することがおすすめです。散歩中に見た景色・触れた動植物について、親子で楽しく会話してみてください。
2-2.記憶力を上げるゲームをする
記憶力を高めるためには、子どもの集中力と好奇心を刺激しなければなりません。そのため、子どもが興味を持って楽しめるゲームをすることがおすすめです。
ここでは、子どもの記憶力を上げるゲームを2つ紹介します。
〇フラッシュカード
絵が描かれたカードを子どもに見せた後に、素早く絵を隠します。「今の絵はなにだったかな」と聞いて、子どもに答えてもらいましょう。簡単に答えられるようであれば、色や個数も聞いてください。
〇カードでお話作り
絵が描かれた3枚のカードを並べて、カードの情報をもとに子どもにお話を作ってもらいます。たとえば「ねこ」「いちご」「公園」の3枚であれば、「ねこがいちごを持って公園に行きました」のようにお話を作ってもらいましょう。
物語をイメージして単語を覚える方法は、「リンク法」と呼ばれる記憶方法です。
ゲームであってもいきなり難しい内容から始めると、子どもに興味を持ってもらえません。最初は簡単に答えられる内容から出題し、徐々に難易度を上げることで、楽しみながら記憶力を養うことができるでしょう。
2-3.絵本の読み聞かせをする
絵本の読み聞かせを行うことで、子どもの発語能力を育むことができます。絵本は絵の情報から言葉の意味をイメージしやすく、聴覚だけでなく視覚も刺激できます。子どもが五感を使って楽しめる絵本は、記憶力を高める教材として適切です。
絵本の読み聞かせをする時は、下記のポイントを押さえましょう。
- 声は優しく、オーバーすぎない程度に抑揚を付ける
- 読み聞かせの途中に質問したり、文章をカットしたりしない
- 絵本は動かさず、子どもに絵をしっかりと見せてあげる
既に読み聞かせを行った絵本であっても、子どもが大好きな絵本であれば繰り返し読み聞かせすることがおすすめです。同じ絵本を繰り返し読み聞かせることで、子どもは絵本に出てくる言葉を記憶しやすくなります。
3.幼児の記憶力を効果的に上げるコツ
記憶力を高める方法を実践する際に、子どもが集中できない場合・興味を示さない場合は効果が期待できません。記憶力を効果的に上げるためには、子どもに楽しく取り組んでもらうことが大切です。
下記では、記憶力を効果的に上げるコツを紹介します。
〇短い時間で取り組む
子どもが集中できる時間は「年齢プラス1分程度」と言われています。幼児期は集中できる時間が短いため、記憶力を上げる取り組みは短時間で行いましょう。
読み聞かせであれば、子どもの目・耳や指が絵本に向かっている時は集中できている状態です。反対に、子どもの目や耳が絵本に向かっておらず、全身がソワソワとしている時は集中が切れています。
記憶力を上げる取り組みは集中できているタイミングで行い、集中が切れたなら休憩を挟むことが大切です。
〇興味を持つ分野にする
子どもは好きなキャラクターや興味のあるジャンルの知識に対して、優れた記憶力を発揮しやすくなります。そのため、記憶力を上げる取り組みは、子どもが興味を持つ分野で行いましょう。
たとえば、昆虫が好きな子どもの場合は「フラッシュカード」を昆虫の絵柄で作ると効果的です。絵本も昆虫が登場するお話を選ぶことで、子どもの関心を高めることが可能です。
子どもは自分が興味を持っている分野の絵や言葉を積極的に吸収するため、自然と記憶力を高めることができます。
また、子どもの記憶力を高めたいからと、義務的にゲーム・絵本の読み聞かせを行うことは好ましくありません。子どもが楽しんで取り組めるようなアプローチを心がけることが重要です。