幼児教育に興味や関心がある方の中には、「モンテッソーリ教育」という言葉を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。現代ではさまざまな教育の形があり、モンテッソーリ教育もそのうちの一つです。
幼少期に受ける教育は、その後の人格形成に影響します。子どもに受けさせる教育の候補として、モンテッソーリ教育を検討してみましょう。
今回は、モンテッソーリ教育の概要を解説します。教育内容やメリット・デメリットなども解説するため、モンテッソーリ教育について知りたい方は参考にしてください。
1.モンテッソーリ教育とは?
モンテッソーリ教育とは、子どもには自らを育てる能力「自己教育力」が備わっていることを前提に、自己教育力を存分に発揮できるよう体系化された教育メソッドです。
モンテッソーリ教育は、世界中の著名人や有名企業の経営者が受けていたことから認知度が高まり、今後の時代を生き抜くための教育メソッドとして注目を集めています。
1-1.発案者のマリア・モンテッソーリとは?
発案者であるマリア・モンテッソーリは、ローマ大学最初の女性医学博士であり、大学卒業後に障がい児の治療教育に携わっていた人物です。障がい児の治療教育に携わり続けた後、1907年に「子どもの家」を設立しました。
子どもの家は、貧困層と呼ばれる健常児を対象にした保育施設です。マリア・モンテッソーリは、ここでモンテッソーリ教育を作り上げたと言われています。
2.モンテッソーリ教育に必要な環境と大人
モンテッソーリ教育では、子どもの自己教育力を引き出すために、「環境を整えること」と「適切な教育・指導を行う大人(教師)」を必要としています。
モンテッソーリ教育における「環境」とは、自らの意思で活動を選択できるよう整理整頓された、子どもにとって作業しやすい環境を指します。また、子どものレベルに合わせた教材や教具を準備することも、環境整備の一環です。
モンテッソーリ教育では「子どもの成長をサポートする援助者として適切な環境を用意すること」が大人の役割としています。基本的に大人が介入することは避け、子どもの様子を見守りましょう。また、子どもが何をするのか自らの意思で決めるためには、大人が選択肢を与えることも重要です。どのような教材・教具を用意するのか、よく考えることが求められます。
3.モンテッソーリ教育の内容
モンテッソーリ教育に興味・関心がある方は、実際にどのような教育内容が実践されているのか気になるのではないでしょうか。モンテッソーリ教育を検討する際は、教育の内容を把握することが必須です。
ここでは、幼児期におけるモンテッソーリ教育の内容について解説します。
3-1.子どもの成長過程における「敏感期」
モンテッソーリ教育は、子どもの敏感期を積極的に利用して効果的な成長を促すことが特徴です。敏感期とは、子どもが特定の分野に対して強い興味・関心を示す時期のことを言います。
1.言語の敏感期
話し言葉:7ヶ月の胎児期~3歳前後
文字:3歳半~5歳半
言語の敏感期は、音声言語と文字言語に分かれます。話し言葉である音声言語の敏感期は、母体にいる頃からすでに始まっています。3歳半頃からは文字に対しても強い興味・関心を持つ傾向です。
2.秩序の敏感期
6ヶ月~3歳前後
秩序の敏感期とは、物の置き場所や順序といった特定の秩序に対して、非常に強いこだわりを見せる時期のことです。
3.感覚の敏感期
感覚的な印象の溜め込みや探求:0~3歳
感覚的な印象の整理・分類・秩序化:3~6歳
人間の五感が対象となる時期が感覚の敏感期です。幼児期の前期は体験した感覚的印象をすべて溜め込み、3歳以降では溜め込んだ感覚的印象を頭の中で整理して記憶します。
4.運動の敏感期
運動機能の発達:0~3歳
調整・洗練された運動機能の発達:3~6歳
運動の敏感期は幼児期の期間のほとんどが該当します。3歳頃までは大きな動作、3歳以降はより細かい高度な動作へと発達します。
5.数の敏感期
4~5歳
自分の年齢・ナンバープレート・数遊びに強いこだわりを見せる時期が数の敏感期です。ある程度知性や感性が育った4~5歳頃に出現します。
6.文化の敏感期
4~6歳
言語・数以外の興味・関心は文化の敏感期とされています。現代の子どもは幼児期から出現するケースが多い傾向です。
3-2.年齢ごとの「教育環境・教育分野」
モンテッソーリ教育では、普段の活動のことを「お仕事」と呼びます。お仕事では、以下のような活動を子どもの年齢や発達に応じて行う必要があります。
○前期(0~3歳) |
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前期に該当する時期は、人の人生において最も吸収力が高い時期であり、言語・歩行・日常動作などを驚くべきスピードで吸収します。 1.粗大運動活動 粗大運動とは、からだ全体の筋肉を使った大きな動きを行う運動のことです。具体的には、ずり這いから歩行までの運動のことを指します。 2.微細運動活動 微細運動とは、腕や手の筋肉を使った細かい運動のことです。前期の子どもに対しては、腕全体を使って叩く・落とすといった大きな動作から、次第に指先で物をつまむ動作まで徐々に慣らします。 3.日常生活の練習 粗大運動と微細運動を組み合わせた動作と日常生活への適応力を身につけるため、衣類の着脱・料理・洗濯といった日常生活動作に基づいた活動を行います。 4.言語教育活動 話し言葉の敏感期にあたるため、年齢や発達段階に応じた言語・語彙の獲得を目指します。 5.感覚教育活動 前期の子どもは感覚の敏感期でもあるため、発達段階・興味関心に応じたさまざまな知育教具に触れることで、豊かな感覚を養うことを目指します。 6.音楽活動 モンテッソーリ教育では、聴く・歌う・踊るなど音楽を積極的に楽しめる環境を用意して、子どもの発達をサポートします。 7.美術活動 美術活動では、言語を使用せずに自分の考え・思いを表現することや、指先動作・目と手の連動動作の獲得を目指します。 |
○後期(3~6歳) |
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後期に該当する時期は、前期で吸収した感性・運動・知識などを意識的に頭の中で整理するため、「意識の芽生え」と呼ばれています。 1.日常生活の練習 後期の子どもが該当する模倣期・運動の敏感期を利用して、前期よりも一歩進んだ自分の身体を自在に動かす能力を身につけます。 2.感覚教育活動 感覚教育では、感覚の敏感期を利用して、感覚器官を意識的に使用して練習を行い、観察力・思考力や知性・情緒の発達を目指します。 3.言語教育活動 後期の言語教育活動では、言葉の発達段階に応じて言語・語彙から文法の獲得までを目指します。 4.算数教育活動 数の敏感期を利用して、数量を示したり手で扱ったりできることを目指します。 5.文化教育活動 小学校の理科・社会に相当する幅広い分野において、子どもが興味を示した分野を学習します。 |
4.モンテッソーリ教育のメリット・デメリット
モンテッソーリ教育のメリット・デメリットは、以下のとおりです。
○メリット |
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・子どもの個性を伸ばすことができる 子どもの特徴や性質に応じた教育・保育を行うため、集団保育よりも子どもの個性を大きく伸ばすことが可能です。 ・主体的な子どもに育てることができる 子どもが自分で考えたり判断したりすることを促すため、自ら行動を起こす主体的な子どもに育てることができます。 ・コミュニケーション能力が身につく さまざまな年齢・個性の子どもが一緒に学ぶ環境が用意されており、自然とお互いを尊重するスキルやコミュニケーション能力が身につきます。 |
○デメリット |
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・協調性が育ちにくい モンテッソーリ教育は、子どもの多様性を認めて個性を伸ばすことに重きを置いています。その影響として、協調性が育ちにくい側面があります。必要に応じて集団行動などを取り入れましょう。 ・運動不足になりやすい モンテッソーリ教育は、屋内での知育活動が多くを占めることから、運動不足を招きやすい傾向にあります。意識的に屋外活動を織り交ぜてフォローすることが必要です。 |
モンテッソーリ教育を受けさせるかどうか検討する際は、上記のメリット・デメリットを考慮して検討するようにしてください。